★『今日からスタート、その挨拶②』★
ボクが高校へと進学して通う学び舎を違えてからというもの、門前寺クンのあの気嵩を絵に描いたようなFaceを窺がう機会はめっきりと減ってしまった。否、もはや皆無と言っても良いだろう。
彼女と同じ中学校に籍を置いている我が愚弟(※ボクにとてもよく似ている)からの伝聞によれば、現生徒会のトップである門前寺クンは、その持ち前のデストロイカリスマ性を大いに発揮し、日々八面六臂の大活躍。生徒はもちろん、教職員や保護者、そしてPTAの役員方からも多大なる支持を集め、学内新聞で特集された際には、『校史上に類なき鋼の生徒会長』とまで評されたという話だ。
フフ……、なんとも頼もしいじゃないか。そんな彼女から熱心に信奉されている立場のボクとしても、実に誇らしく思うよ。
不幸にも、この鴛鶯鸚哥丸 秀と言う、あまりにも美しく偉大な前任者から生徒会長職を引き継いだが故、もしやその強烈なプレッシャーに苦しんでいやしないかと心配もしたけれど、どっこいそんな物は単なる杞憂に過ぎなかったのだね。願わくば、ボクが門前寺クンに直接面会して労いの言葉のひとつでも……もしくは、甘酸っぱさの残る未熟(おさな)い苺を食す時のように、コンデンスミルクをビュッ!っと掛けてあげられたら良いのだけれど……。
いや、ボク自身も古巣である生徒会に顔を出そうと、何度か中学校の方には伺ったのだけれどね。なぜだかその度に、白と黒のオシャレなツートンカラーの車が駆けつけてきて、半ば強制的に同行を求められてしまうんだ。そんな事が四回程あったのだけれど、一体どういう事なのか皆目見当がつかない。
もしや、『うつくしいは、罪悪(つみ)!』という理不尽極まる刑法が、ボクの預かり知らぬ間に制定されてしまったのかな……?
まあ、そのような状況だからして、心苦しいが未だに訪問を果たせずにいるというワケなんだ。
あぁ……門前寺クンをはじめ、生徒会の可愛い後輩たちは、さぞや寂寥の思いに胸を焦がしている事だろう。しかしボクだって、このまま成す術もなく引き下がる様な、ルックスONLYのメンズじゃないのさ。
フフ……ここだけの話だが、実はあるドッキリプランを実行に移すため、最近は毎日のように、そのリハーサルを行っているんだ。
えっ、どんなドッキリプランか知りたいって? まったく……我慢の苦手なわがままCATたちだね。
仕方あるまい、では特別に教えてしまおうじゃないか。いざ、括目せよ!!
驚くなかれ、まず自家用ヘリコで中学校上空まで飛んでいき、そこからパラシュートを使って
華麗にダイビング!!
そのまま校舎スレスレに降下して、外側から窓を蹴破り生徒会室に直接推参するって寸法さ。
しかしながら、あの粗忽な生徒会のみんなの事だからね。もしかすると、
「て、天使が人間界に舞い降りてきた!?」
なんて勘違いして、ともすれば学校中がパニックになってしまうかも。
そうなったら仕方ないけれど、もう正体を明かさざるを得ないだろう。
「天使だって? フフ……半分正解、そして……半分不正解。よくごらん。ジャーン! ボ・ク・さ」
「えっ? あ、ああッ!? え、鴛鶯鸚哥丸先輩ッ!? なーんだ、それじゃあ文句の付けようが無いくらい正解じゃないですかぁ!」
「ほう、それは何ゆえだい?」
「だって先輩は、僕ら生徒会にとってのエンジェルだもの!」
「おやおや、これは一本だね。フフ……頭かくして翼(はね)隠さずとは、正にこの事カナ?」
Fin.
なんてね。
まあ、実際どれ程のセンセーションが巻き起こるかは想像も付かないけれど、だがこうしている間にも生徒会の……否、あの中学校の誰もが、
秀ちゃん分が足りなくて悶え苦しんでいる事は揺ぎ無い事実。きっと門前寺クンだって、
鋼の生徒会長だけに、ボクの降臨を切望
スティールに違いないのさ。
(③へ続く)
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